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3.福祉・医療・子育て支援施策

1.地域医療の拡充について

(1)医療の整備目標策定

 大阪府保健医療計画(※19)(平成25年度〜29年度)に基づき、前期計画で課題が残っている5疾病(ガン・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病・精神)対策については、目標値の設定を行い重点的に取り組むとともに、4事業(救急医療・災害医療・周産期医療・小児救急を含む小児医療)および在宅医療も、PDCAサイクルを効果的に機能させながら取り組みを進めること。また、病院勤務医の不足・偏在を解消するため、医療対策協議会(※20)と地域医療支援センター(※21 )が連携した取り組みを着実に実行すること。

(2)がん検診率の向上

 大阪府においては、がんが死亡原因の第一位で、3人に1人ががんにより亡くなっている。さらに、市町村における各がん検診の受診率(平成22年度)は5.4%(胃がん検診)〜21.7%(子宮頸がん検診)となっており、がん予防を推進するための特定検診をはじめ、検診率向上の有効的な施策を講ずること。

(3)不妊症・不育症の負担軽減

 不妊治療を受ける夫婦の経済的負担を軽減するため、不妊治療に要する費用の一部助成を拡充させること。また、妊娠しても流産や死産を繰り返す不育症(※22)治療に対する助成制度を確立すること。さらに、不妊治療や不育症治療は精神的負担も大きいことから、カウンセリング機関・窓口を充実させ、広く周知すること。

2.医療・介護サービスの連携と強化について

(1)地域包括ケアシステムの確立

 地域包括支援センター(※23)の機能や役割を強化し、住み慣れた地域で、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ間なく、有機的かつ一体的に提供される「地域包括ケアシステム」(※24)を確立すること。また、市町村に設置する「地域包括支援センター」の運営体制の整備と財政基盤の強化から地域支援事業内容の拡充をはかること。

(2)介護事業者に対する指導・監査の連携強化

 介護事業者に対する指導・監査について市町村との連携を強化すること。また、事業者に対しては労働関係法規・通達の遵守を周知・徹底するとともに、労働者の賃金が最低賃金を下回るなど法令違反が見られる場合は、事業者指定の取り消しを行うなど、厳正な指導監査を実施すること。

(3)認知症対策の充実

 認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)に基づき、「早期診断・早期対応」の取り組みとして、かかりつけ医認知症対応力向上研修や認知症サポーターの養成等を実施しているが、新たに設置された「認知症初期集中支援チーム」が実施するモデル事業の動向についても注視すること。
 また、認知症を標的にした詐欺が発覚していることから、成年後見制度(※25)を活用等によって被害を防げるよう啓発活動を強化すること。

3.障がい者に対するサービス充実と権利擁護の確立について

(1)障がい福祉サービス基盤の整備

 大阪府障がい者計画の策定においては、障がい者の置かれている事情や環境を正確に把握するとともに、同計画に基づいて地域における障がい福祉サービス基盤を整備すること。また、市町村が実施する地域生活支援事業として、1)サービス提供者などに対する研修および啓発事業、2)障がい者や家族などの活動に対する支援事業、3)後見制度に関する人材の育成や研修事業等を追加し、これらに必要なサービス量が確保される財源措置を講ずるよう国に働きかけること。

(2)サービス利用計画案に基づいた相談支援体制の強化について

 障がい者本人の希望を尊重して作成されたサービス利用計画案(※26)に基づき、支給決定が行われるよう相談支援体制を確立すること。そのためには、相談支援専門員の養成や相談支援事業所の拡充等を計画的に行うこと。

4.「こども総合計画(仮称)」について

 子ども・子育て関連3法が公布され、平成27年度から新たな子ども・子育て支援制度が本格施行され、大阪府も子ども施策を総合的に・計画的に推進するための「(仮称)子ども総合計画」が策定される。具体的には「大阪府子ども施策審議会」で議論されることから、十分に実態・ニーズ調査を行った上で実効ある事業計画を策定すること。
 合わせて、各市町村においても労使代表や保護者代表等参画のもと、早期に「子ども・子育て会議」を設置するよう働きかけること。

5.待機児童の解消について

 待機児童の早期解消と保護者の経済的負担軽減のため、大阪府でも十分な財源を確保すること。合わせて、市町村の地域実態に応じた子育て支援施策を拡充するなど、各市町村と連携を強化し取り組むこと。

(※19) 医療計画
地域医療における切れ目のない医療提供体制の整備をはかる観点から、医療資源の効率的な確保・活用、医療関係施設の機能分化・連携を目的として、各都道府県が医療を提供する体制の確保に関する計画を定めるものであり、1985(昭和60)年の医療法改正(第1次改正)で創設された。今般の見直しでは、医療計画に記載する事項として、がん、脳卒中、急性心筋梗塞および糖尿病の4疾病ならびに救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、および小児医療の5事業に加え、新たに精神疾患が加わった。また、この5疾病5事業と合わせて、在宅医療についても計画に定めることとなった。
(※20)医療対策協議会
必要な医師の確保や医療機関への配置、地域医療を担う医師の生涯を通じた教育研修体制の整備等に関する会議
(※21)地域医療支援センター
「都道府県が責任を持って医師の地域偏在の解消に取り組むコントロールタワー」の機能を担っており、医師不足にある病院の医師確保を支援する取り組みを実施する。
(※22) 不育症
妊娠はするものの流産を繰り返す場合があり、3回以上続く時は習慣性流産という。不育症はこうした習慣性流産も含め妊娠が満期に至るまでに流産、早死産を起こしてしまうことの総称。定義的にはこうした事態が3回以上続いた時に不育症という。
<不妊治療の患者数(全国)> ※参考
1)不妊治療患者数(全体)46万6900人(推計)、 2)人工授精 6万6000人(推計)
※1)2)は、平成14年度厚生労働科学研究費補助金厚生労科学特別研究「生殖補助医療技術に対する国民の意識に関する研究」(主任研究者:山縣然太郎)において推計された調査時点における患者数。
3)体外受精 5万9879人(実数)、?顕微授精 3万4231人(実数)
※3)4)は、平成18年の1年間に治療が実施され、日本産婦人科に登録施設から報告された実数。
(※23) 地域包括支援センター
地域住民の心身の健康保持および生活安定のために必要な援助を行うことにより、地域住民の保健医療向上および福祉の増進を包括的に支援することを目的として、包括的支援事業などを地域において一体的に実施する役割を担う中核的機関として設置。包括的支援事業としては、1)介護予防ケアマネジメント、2)総合相談・支援、3)権利擁護、4)包括的・継続的ケアマネジメント支援である。
(※24)地域包括ケアシステム
地域住民に対し、保健サービス(健康づくり)、医療サービス及び在宅ケア、リハビリテーション等の介護を含む福祉サービスを、関係者が連携、協力して、地域住民のニーズに応じて一体的、体系的に提供する仕組みである。ソフト(事業)面では、その地域にある保健・医療・介護・福祉の関係者が連携してサービスを提供するものであり、ハード面では、そのために必要な施設が整備され、地域の保健・医療・介護・福祉の資源が連携、統合されて運営されていることである。
(※25)成年後見制度
精神上の障がい(知的障がい、精神障がい、認知症など)により、判断能力が十分でない人が不利益を被らないように家庭裁判所に申立てを行い、その人を援助してくれる人をつけてもらう制度。
(※26)サービス利用計画案
「指定特定相談支援事業者」が、障害福祉サービス等の利用を希望する障がい者の総合的な援助方針や解決すべき課題を踏まえ、最も適切なサービスの組み合わせ等について検討し、作成するもの。