pagetop

3.福祉・医療・子育て支援施策

1.地域医療の拡充について

(1)医療の整備目標策定

 厚生労働省から「医療計画(※13)の作成指針」が示され、都道府県では2013(平成25)年度からの医療計画(5か年計画)の策定作業を2012(平成24)年度に行うこととなっている。現在、大きな課題となっている第2次医療圏(※14)における救急診療や夜間・休日診療体制、周産期医療(※15)・小児医療体制、災害時の医療提供体制について、整備目標を立てること。また、医師不足や地域別偏在を是正すること。

(2)がん検診率の向上

 全国順位で著しく検診率の低い五つのがん(肺・胃・大腸・乳・子宮)について、検診率向上の有効的な施策を講じること。

(3)HIV・エイズ検査などの拡充

 HIV・エイズの正しい知識の普及、感染者・患者数の減少、即日検査も含めた相談・検査のさらなる拡充にむけて取り組むこと。

(4)不妊症・不育症の負担軽減

 不妊治療を受ける夫婦の経済的負担を軽減するため、不妊治療に要する費用の一部助成を拡充させていくこと。また、妊娠しても流産や死産を繰り返す不育症(※16)は、特殊な場合を除いて正しい検査と治療を行うことで、80%以上の人が子どもを出産することができることから不育症治療に対する助成制度を確立すること。さらに、不妊治療や不育症治療は精神的負担も大きいことから、カウンセリング機関・窓口を充実させること。

2.医療・介護サービスの連携と強化について

(1)切れ目のない介護施策の推進

 地域包括支援センター(※17)の機能や役割を強化し、介護、介護予防、医療、生活支援サービス、住宅、の五つ視点で、入院・退院・在宅復帰を通じて切れ目なく、利用者のニーズに応じて適切な組み合わせでサービスが受けられる「地域包括ケアシステム(※18)」の確立に向けた取り組みが不可欠になっている。2017(平成29)年度末の介護療養病床(※19)の廃止期限を踏まえ、計画的な削減・病床の転換を進めていくこと。その際、要介護高齢者の行き場がなくならないよう十分配慮すること。また、要介護高齢者が、できる限り住み慣れた地域での在宅生活を続けられるよう、医療機関とも連携をし、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスの充実を図ること。

(2)介護事業者に対する指導・監査の連携強化

 介護事業者に対する指導・監査について市町村との連携を強化すること。また、事業所が廃止される場合には、利用者のサービス継続の確保、利用者と馴染みのある介護労働者の雇用確保についても、市町村とも十分な連携を行い、支援を行うこと。

(3)認知症対策の充実

 「早期発見・早期治療」が必要とされる認知症の対策について、認知症へのケアシステムを開発充実させるとともに、介護施設および介護サービスの強化を図ること。また、認知症検診の医療体制整備と専門医の育成に努めること。

3.障がい者に対するサービス充実と権利擁護の確立について

(1)広域的な障がい者サービスの拡充

 障がい者の自立支援と社会参加促進の観点から、利用者の実情に応じた障がい者支援サービスを適切に提供することを求める。そこで広域的な地域生活支援事業として、1)研修および啓発活動、2)障がい者や家族などの活動に対する支援事業、3)後見制度に関する人材の育成や研修事業、手話通訳などの養成事業を追加および補強すること。

(2)適正かつ公正負担な障がい者サービス

 障がい者本人の希望を尊重して作成されたサービス利用計画案に基づき、支給決定が行われるよう相談支援体制を確立すること。また、障がい福祉サービスの利用者負担、施設居住費・食費、自立支援医療の自己負担などについては、障がい者の負担能力に配慮して、適正かつ公平な負担とすること。

4.「こども・未来プラン」の補強について

 こども・未来プラン(大阪府次世代育成支援行動計画)後期計画が、2012(平成24)年度で中間年度にあたることから、「子育て目標」として掲げている数値などを検証し中間総括を行うこと。また、関係審議会や府民からのパブリックコメントなどで意見聴取を行い、2013(平成25)年度以降に目標達成に向けて計画の補強を実施すること。

5.待機児童の解消について

 2012年4月1日現在で認可保育所に入れない待機児童が府域で2050人(昨年同期比340人増)となっていることから、保育所待機児童の解消にむけて、市町村と連携して取り組みを強化すること。また、保育ニーズの充足および保育の質を維持するためにも、大阪府内の保育施設で保育士の配置を増やせるよう、独自の予算措置による保育人材雇用支援事業を大阪府として実施すること。

(※13) 医療計画
地域医療における切れ目のない医療提供体制の整備をはかる観点から、医療資源の効率的な確保・活用、医療関係施設の機能分化・連携を目的として、各都道府県が医療を提供する体制の確保に関する計画を定めるものであり、1985(昭和60)年の医療法改正(第1次改正)で創設された。

 今般の見直しでは、医療計画に記載する事項として、がん、脳卒中、急性心筋梗塞および糖尿病の4疾病ならびに救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、および小児医療の5事業に加え、新たに精神疾患が加わった。また、この5疾病5事業と合わせて、在宅医療についても計画に定めることとなった。

(※14)医療圏
一次医療圏:身近な医療を提供する医療圏で、医療法では規定されてはいないが、保健所(地域保健法第5条の2)や介護保険制度等との兼ね合いから、市町村を単位として設定されている。
二次医療圏:特殊な医療を除く一般的な医療サービスを提供する医療圏で、複数の市町村を一つの単位として認定される。 大阪府では、大阪市・堺市・豊能・三島・北河内・中河内・南河内・泉州の8つが設定されている。
三次医療圏:最先端、高度な技術を提供する特殊な医療を行う医療圏で、原則都道府県を一つの単位として認定される(例外:北海道と長野県)。
(※15)周産期医療
周産期(妊娠満28週、または胎児の体重が1000グラムに達したときから、出生後1週間までの期間。周生期)とその前後の期間の母子に生じがちな突発的な事態に対応するための、産科と新生児科とを統合した医療。
(※16) 不育症
妊娠はするものの流産を繰り返す場合があり、3回以上続く時は習慣性流産という。不育症はこうした習慣性流産も含め妊娠が満期に至るまでに流産、早死産を起こしてしまうことの総称。定義的にはこうした事態が3回以上続いた時に不育症という。
【不妊治療の患者数(全国)】※参考
(1)不妊治療患者数(全体)46万6900人(推計)、 (2)人工授精 6万6000人(推計)
※(1)(2)は、平成14年度厚生労働科学研究費補助金厚生労科学特別研究「生殖補助医療技術に対する国民の意識に関する研究」(主任研究者:山縣然太郎)において推計された調査時点における患者数。
(3)体外受精 5万9879人(実数)、(4)顕微授精 3万4231人(実数)
※(3)(4)は、平成18年の1年間に治療が実施され、日本産婦人科に登録施設から報告された実数。
(※17) 地域包括支援センター
地域住民の心身の健康保持および生活安定のために必要な援助を行うことにより、地域住民の保健医療向上および福祉の増進を包括的に支援することを目的として、包括的支援事業などを地域において一体的に実施する役割を担う中核的機関として設置。包括的支援事業としては、(1)介護予防ケアマネジメント、(2)総合相談・支援、(3)権利擁護、(4)包括的・継続的ケアマネジメント支援である。
(※18)地域包括ケアシステム
地域住民に対し、保健サービス(健康づくり)、医療サービス及び在宅ケア、リハビリテーション等の介護を含む福祉サービスを、関係者が連携、協力して、地域住民のニーズに応じて一体的、体系的に提供する仕組みである。ソフト(事業)面では、その地域にある保健・医療・介護・福祉の関係者が連携してサービスを提供するものであり、ハード面では、そのために必要な施設が整備され、地域の保健・医療・介護・福祉の資源が連携、統合されて運営されていることである。
(※19)介護療養病床
介護保険による病床を介護療養病床と呼ぶ。介護療養病床については、2012年3月末をもって廃止することとされていたが、介護保険施設等への転換が進んでおらず、廃止期限を2017年度末まで延長した。