2018年度 大阪市立大学・連合大阪寄付講座
「働くこととは」、「労働組合、労働運動とは」、「労働者の権利とは」、「働くことをめぐる諸課題」等などについて考え、理解するとともに、そうした上で働き、社会活動を行っていく人材を育成することを目的とする。
日時 | 2018年10月22日(月)13:00〜14:30 |
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場所 | 大阪市立大学 |
講師 | 村上 陽子(連合 総合労働局長) |
趣旨 | 「働き方改革」が不可欠なことは、労使ともに一致している。しかし、具体的には、労使の立ち位置は必ずしも一致していない。2018年の通常国会を終え、交わされた議論と結果についての評価、今後の展望等について述べる。 |
テーマ | 「働き方改革の評価と展望」〜長時間労働・同一労働同一賃金を中心に〜 |
内容 | 1.ワークルールは、公正でなければならず、そのための法律は雇用関係法【労働者と使用者の個別の関係を規律する法(労基法や労働契約法、最低賃金法等)】、労使関係法【使用者と労働者との集団的な関係を規律する法(労働組合法等)】、労働市場法【求職者と求人者との取引に関する法(職業安定法、労働者派遣法等)】、労働紛争解決法【労働紛争を解決するための法(労働審判法等)】がある。 よって、「労働契約を結んでおらず、就業規則も提示されていない。」「求人票に『交通費支給』とあったが、実際は支払われない。」「休日に出勤しても休日手当もない。」等は、法律違反となる。このようなことは、働く前に知っておいてほしい。 2.労働法・政策の立法プロセスについて、労働法の制定・改廃は公(政)労使三者構成の労働政策審議会で審議され、まとまった内容が尊重され、政府が法案を提出する(ILO三者構成原則)。この原則に基づき、「働き方改革」が議論されるべきだが、今国会では、労働審議会での議論が尊重されず、また、十分な審議時間が無いまま採決されてしまった。 3.「働き方改革関連法案」の問題点とは、ひとつに「長時間労働」の課題である。年間総実労働時間は、減少傾向で推移しているが一般労働者の総実労働時間は未だに2,000時間を超えている。労働時間の上限規制が設けられたのは、初めてのことである。より実効力のあるものにするには、働く人の意識改革と36協定の締結や、すでに同協定が締結している職場では、新たな法律に適用しているか、また特別条項のチェック等の働きかけが不可欠である。もうひとつは、「同一労働・同一賃金」である。これは、正規雇用社員と非正規雇用者の処遇に大きな隔たりがあり、これらの不合理な格差を無くしていく取り組みを進める。 4.最後に、水町勇一郎氏の「労働法入門」には、「・・・不条理な事態に直面したときに、泣き寝入りしたのでは自分の権利や信念は 守られない。それだけでなく、法と乖離した実態を容認することは、会社側に法は守らなくてもよい、さらには、法を守っていては厳しい競争に生き残れないという意識を植えつけ、公正な競争の前提自体が損なわれる事態を生む。・・・自分たちの権利 や利益を一つ一つ守っていってほしい。それは、自分や友人のためにはもちろんのこと、会社のためにも、社会全体のためにもなる。」と記されている。おかしなことには、声をあげる勇気を持ち続けよう。 |