2013年11月1日更新
連合大阪は10月25日、連合大阪第25・26年度の運動方針を確立する、第16回定期大会をエルシアターで開いた。
川口連合大阪会長は「働くことを軸とする安心社会」を実現するために何をなすべきかという視点で、(1)民主党支援をふくめた政治とのかかわり、(2)労働運動が国民の共感を呼ぶ運動になっているかということ、(3)2014春闘について、(4)橋下政治、大阪維新政治の終わりの始まりにする闘いについて提起し、運動への結集を訴えた。
大会では新年度方針に対し、「非正規労働者の均等待遇」や「労働法制の問題」、「中小労組の連合運動へのかかわり」などの質問が出されるなど、活発な議論が行われた。第25・26年度方針および役員体制が確立・確認された。新役員を代表し、山﨑新会長は「ストップ・ザ・格差社会! すべての働く者の連帯で『安心社会』を切り拓こう! という「志」を全組合員で共有しながら、働く者の尊厳を大切にした力強い社会性ある運動を、連合大阪の先頭に立って進めていく」と力強くあいさつした。
全員の団結ガンバローで、新年度の運動推進の決意を固めた。
川口清一会長あいさつ
第16回連合大阪定期大会にご出席いただいた皆さんご苦労さまです。
そして、公私とも大変お忙しい中、私どもの大会にご臨席をいただきましたご来賓の皆さまに大会構成員を代表して心から御礼を申し上げたいと思います。
さて、昨年の地方委員会から1年、全ての活動を真摯な反省と評価の上に立って新しい活動、運動を生み出していかねばなりません。本日は、そうした意義ある大会にしていただくよう昌頭まずお願いをしておきたいと思います。その上で、何点かについて課題提起をさせていただきたいと思います。
私たちが目指す「働くことを軸とする安心社会」実現のために何をなすべきか、その1つは、政治との係わりであります。言うまでもなく政策・制度の実現のためには、政治との係わりは不可欠であります。私たちが支援しました民主党は、昨年12月の総選挙、7月の参議院選で大敗北を喫し、この大阪においても両選挙で多くの議席を失うこととなりました。また、参議院比例区の組織内候補の当選が6名にとどまったことなど大変残念でなりません。ご協力を頂いた全ての皆さん、そして参議院全国比例選で奮闘された組織の皆さんに敬意を表したいと思います。選挙結果は、一言でいえば「信頼の回復に至らず」ということではあるが、信頼回復のためには危機感を持って何をなすべきか自浄力も必要であります。民主党は、相当の覚悟で党再生に全力で取り組むべきであり、職場組合員の中にまん延しつつある「なぜ民主党なのか?」という疑問に応えるためにもそして国民からの信頼を回復するためにも是非、成し遂げていただきたい。ということを申し上げておきたいと思います。
また、私たち労働組合も「なぜ民主党なのか?」という組合員の率直な疑問に応えていかねばなりません。それは、私たちがめざすべき目標や理念が共有しうる政党はどこか。良質な政治には、健全かつ力のある野党の存在が必要であること。そして、議会制民主主義の核心は、政権交代であり、政権交代可能な政治体制構築のために、どの政党が中心的な役割を担うべきかなど、職場組合員の理解を得る地道な努力が必要であるということも申し上げておきたいと思います。
一方、昨年末誕生した安倍政権は参議選での勝利を得て政権運営に自信と強い意欲を示そうとしています。しかし、安倍政権は、新自由主義的な考え方のもと、再び雇用労働分野の規制改革を推し進めようとしています。それは、安倍政権、3本目の矢である成長戦略、その柱は規制改革を推し進めることであり、重要政策の一つが「国家戦略特区」を作ることであります。
この大阪からも政府に対し、要求がなされていますが、「戦略特区」内において、一定の案件を満たせば解雇の自由度が高まり、時間外労働の対価を支払わなくていい制度を導入しようとしていることについては、先送りされる模様であるが、対象となる省庁を外すなど横暴な振る舞いをしようとしています。このように働くことそのものを商品化しようとする政策は、私たちの求める「人間らしい労働」「ディーセントな働き方」からは程遠いものであり、働く者を踏み台にした経済成長は、社会の安定や、社会の持続可能性を損なうものであり、決して許されるものではありません。安倍政権が進めようとする成長戦略は、一体誰のための成長戦略か、誰のための規制改革なのかと言わざるを得ません。かつて、新自由主義的な政策を進めてきた自民党、小泉構造改革、そしてその流れを受けた第1次安倍内閣は、いったい社会に何をもたらしたのか。労働者派遣の自由化など労働分野の規制緩和によって、非正規労働者やワーキングプアが急増し、貧困・格差社会を生み出した訳であります。
今、連合大阪に寄せられている労働相談は、解雇、雇い止め、いじめやパワハラ、残業代の未払いなど守るべき法があるにもかかわらず守られていない実態が数多く寄せられています。この様な実態の上に、解雇や労働時間規制の緩和を進めていけばどうなるか、間違いなく雇用は崩壊していくことになると言わざるを得ません。
私たちは、雇用、労働分野の規制緩和によって雇用の劣化や所得格差の拡大を再び生み出そうとする政治を許してはなりません。
また、消費税は上げるけど、社会保障一体改革を先送りしようとする政治、なしくずし的に公共事業が拡大し赤字財政の拡大懸念がある政治、こうした危うい政策を進めようとする政治の政策転換を求めていくために、広く社会に訴えていく運動を強化していかねばならないと考えています。
第2点目は、労働運動が国民の共感を呼ぶ運動になっているかということであります。昨今、私たち労働組合を見る目が厳しいものになっています。それは、労働組合が悪という見られ方やマスコミ論調が見られます。こうした見方をされることは、労働運動にたずさわる一人として極めてかなしいことであります。何故、そう言われるのか、今一度、胸に手を当てて考えて見ることが必要ではないか? 私どもの行動や運動、政策のあり様も含めて正当性あるものとして社会から容認されるものか、常に考えて行動することが必要ではないか。それなくしては、1000万連合達成は、なし得ないし1000万連合達成のためには、社会からの信頼を得る努力が必要である。
また連合は「働くことを軸とする安心社会」実現のために、政治と対峠していくと同時に、連携も重要になってくる。そして、政治との連携を強化しようとすればするほど、連合自らの政策の立ち位置を明確にしていくこと重要なると考えている。外交・防衛・エネルギーの安全保障など社会のあり様や日本の富をどう生み出していくのか。社会から容認される政策を確立していくこと必要でないか。これまでの運動のカラにそれぞれが固執することではなく、カラを破る勇気と議論をつくしていく努力が必要ではないか。 ・・・という主旨で先の連合大会で意見を述べさせていただきました。紹介をさせていただくとともに、是非とも社会から共感が得られる運動としていただくためにも、求心力を維持した連合運動として輝かしい進路を切り開いていただけるようお願いを申し上げたい。
第3点目は、2014春闘についてであります。かつて、経済成長はすれど賃金は上がらないという実感なき景気回復を経験してきた私たちにとって、デフレ脱却、経済再生のためには働く者の所得増加につながるかどうか、労働組合の真価が問われている年ではないかと考えている。
その意味では、9月20日にスタートした経済の好循環実現に向けた政労使会議が重要な役割を果たすことになるのではないかと考えている。もちろん、賃上げなど労働条件を巡る交渉は、政府の介入を許さず、労使自治を原則に労使自らの責任で決定していくことは大前提であります。しかし、デフレ脱却のために克服すべき課題は多くある中で、政労使がそれぞれの立場で社会的責任を果たすことにつながる議論や方向性を見いだす場にできないか、努力されるべきではないかと考えている。すなわち、歴史に学ぶことはできないかということであります。
それは、かつて私たちの先輩は、1970年代半ば、驚異的な物価上昇の中で賃金も32%も上昇するという社会経済情勢の中で、日本経済のスタグフレーションを避けるために、ハイパーインフレからの脱却をめざして、政労使が知恵を出し合った経験を持っています。そして、物価安定などで政府が公約を守るなら、賃上げ幅にも柔軟に対応するという、経済との整合性論を打ち出し、労働組合としての社会的責任を果たしてきた訳であります。今度は逆に企業や政府が責任を果たすという考え方で、全ての働く者の賃上げを実施することや雇用を創り出す政策の実行によってデフレ脱却を図るという社会的合意が図れないか? 労使自治への介入を許してはならないという原則は承知しつつも、先例に学ぶことで労働組合の社会的責任を果たしていくことも重要ではないか問題提起をしておきたい。
最後に大阪における課題についてであります。先の堺市長選において、ようやく大阪維新の会候補に一失報いることができました。御礼を申し上げたいと思います。しかし、この選挙結果は、堺の分割"NO"という意思が示されたものであって、大阪都構想全てを否定したものとはなっておりません。しかし、私どもとしては、今回の堺市長選挙は、橋下政治、大阪維新政治の終わりの始まりにする闘いとして運動を展開してまいりました。今回の勝利を契機に、大阪都構想や戦略特区構想への反対行動を強化することによって、名実ともに維新政治の崩壊につなげていく努力を惜しんではなりません。
また、先頃の新聞報道では、世界の都市格ランクが発表され、大阪はその順位を下げております。とくに"住みやすさ"が大幅に低下したことによるものとの報道がありました。関西経済の活力低下・雇用情勢、そして社会の秩序や歴史・文化の否定など乱暴な行政運営、成果の見えない行政改革などによって評価が低下したとすれば残念なことであります。国政よりも都市格向上へ地方行政の政策力を示すことを優先すべきではないかと申し上げておきたい。
最後に、大阪府労働委員会が示した不当労働行為のすみやかな是正に向けて市当局の責任ある対応を求めてあいさつといたします。
新任役員代表挨拶
ただ今は、ご信任をいただき、ありがとうございます。その責任の重さに、正に、身の引き締まる思いでございます。本日、ご議論いただき、肉付けをいただきました運動方針に基づき、微力ではありますが、全力で取り組んでまいりますので、皆様のご支援、ご指導をよろしくお願い申し上げます。
まずは、これまで3期、6年間にわたり、数々のご功績を残され、連合大阪の運動を導いてくださいました、川口顧問に対しまして、その類まれなるリーダーシップに敬意を表しますと共に、改めて、これまでのご指導に感謝を申し上げたいと存じます。本大会、冒頭のご挨拶でも述べられました熱い思いを、しっかり引き継いで参りたいと存じます。今後とも、大所高所からのご指導をお願い申し上げますと共に、益々のご健勝、ご活躍を祈念申し上げ、改めて皆さんの拍手で、感謝の意を表したいと存じます。本当に、ありがとうございました。
新たな運動期のスタートにあたり、役員を代表して決意の一端を申し述べさせていただきます。
今、私が感じる最大の危機感は、やはりアベノミクスの今後についてであります。簡単に、3つ申し上げます。
1つには、アベノミクスによる恩恵は、公共投資と金融テコ入れによる建築・土木産業、金融産業が中心であり、一歩間違えれば不動産バブル、金融バブルの再来が懸念されるということ。
2つめには、一般の消費動向も、一部富裕層による高額商品の消費に偏っており、富裕層のみが恩恵を受けているアベノミクスなのではないか、ということです。
3つ目には、さらなる格差拡大への懸念です。ご承知のように、雇用労働者の半分に達しようとしている非正規労働者の増加は、働き方の不安定さのみならず、収入も年収200万円程度以下と、国民を二極化させる格差社会を生み出しています。リーマンショックのあと、あの派遣村で問題になった企業倫理の崩壊に対し、ならば法律で規制しようと制限を加えた日雇い派遣の制限も、今また、なし崩し的に緩和されようとしており、おまけに、解雇要件を緩和した戦略特区の議論まで出てきています。
私は、もとより経済成長を否定するものでありません。これからの成熟社会においても、豊かな生活を送るためには、ある程度の経済成長は必要だと考えております。そのためには、経済、社会構造の変化を踏まえた国家としての成長戦略が必要不可欠あることは言うまでもありません。
経済学の教科書によると、経済成長の源泉は、生産性の向上、労働投入量の拡大、さらに大切なことはイノベーション、すなわち技術革新による生産性の向上だと書いてあります。したがって、国の成長戦略とは、端的に言えば、技術開発力や人材能力を高め、国際競争力上、強い優位性を発揮し、今後、企業がより高い付加価値を実現できる分野を積極的に開発していけるような環境整備を、公平、公正に行うこと、と言い換えることができると思います。
また、こうした観点からは、日本において、少子高齢化で労働投入量が減少していくという事実は、まさに、今、そこにある危機なのです。だからこそ、働く意思を持つ老若男女が、働きたいときに働くことができ、なおかつ均等、均衡処遇が実現できる新たな労働市場をつくるということが喫緊の課題なのです。
また、それに先んじて、国の的確な成長戦略と企業の努力によって、老若男女が働ける労働市場を構成する多くの仕事、ディーセントワークを創り出すということも必要です。そして、働く人の付加価値を高めるための、人への投資(学校教育や職業教育)も強化しなければなりません。
さらには、そのような社会で、安心して働けるセーフティーネットや、冨の再配分を公平に行う社会保障制度などの社会インフラの再構築も必要です。
こうした政策を1つのパッケージとして、順番を間違えずに手を打っていくことが必要なのではないでしょうか。
しかし、残念ながら、アベノミクスの3本の矢においては、高度経済成長時代の価値観と、一部の企業経営者や有識者の助言に基づく問題対処による、表面的な経済成長とデフレ脱却に重点がおかれ、その政策の中には、とりわけ「人、働くものを大切にする」という視点が決定的に欠落しているように思えてなりません。また、大阪においては、むしろ、それよりも悪い状況にあるともいえます。
このような状況を打開していくために、後ほど、『ストップ・ザ・格差社会! すべての働く者の連帯で「安心社会」を切り拓こう!』という、連合本部と共通のスローガンを確認いただきますが、私は、これを単なるスローガンにとどめることなく、連合大阪に集う皆さんと共有する「志」とさせていただきたいと思います。
古の教えによれば、「志」を果たしていく上においては、その「志」は一時的ではなく永続的に保つことが重要で、このことを「操」といい、これを「志操」と言うそうです。「操」というのは「みさお」という字です。
また、この「志操」を持ちながらも、問題解決の行動に当たっては、筋を通すことが重要になる。これが「節」であり、それを持続することが「節操」である、と言われています。
連合大阪においては、お互いにこの「志」を共有し、「志操」と「節操」をしっかり堅持し、「働くものの尊厳」を大切にした力強い社会性ある運動・行動を、時には、これまでの運動の殻も打ち破る勇気をもって、共にすすめていこうではありませんか。
結びになりますが、改めて、『ストップ・ザ・格差社会! すべての働く者の連帯で「安心社会」を切り拓こう!』という「志」を、皆さんと熱い思いで共有しがら、連合大阪の先頭に立って運動を進めていくことをお誓いするとともに、重ねて皆さんのご指導、ご支援を衷心よりお願い申し上げ、決意の一端とさせていただきます。共に頑張りましょう。ありがとうございました。