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2012年2月21日更新

大阪市労連問題に対する連合大阪の見解

 連合大阪は、2月17日に開催した「第4回連合大阪執行委員会」で、「大阪市労連問題に対する連合大阪の見解」について確認をしましたので、公表します。

 また、同日、連合本部も連合事務局長談話として「大阪市による市職員に対するアンケート調査の即刻撤回を求める談話」を発表いたしました。

 連合大阪法曹団は、2月24日に「大阪市長の労働組合敵視に対する連合大阪法曹団声明」を発表しました。

2012年2月17日

大阪市労連問題に対する連合大阪の見解

 大阪交通労働組合役員による勤務時間中の組合活動に端を発して、橋下市長は大阪市労連の組合事務所退去に言及〔読売新聞(2011年12月27日)〕し、組合への便宜供与の全面禁止を指示〔毎日新聞(2012年1月16日)〕とするなどあからさまな労働組合攻撃を続けている。さらに2月9日、橋下市長が業務命令として大阪市全職員に対して行った政治・組合活動に関するアンケートは、勤労者の団結をおびやかすもの、つまり労働組合の存在を否定するものに他ならず、加えて憲法で保障された思想信条の自由の領域まで踏み込むものである。

 こうした橋下市長の一連の労働組合攻撃には、論理の飛躍、すり替え、感情論、法的な誤り等が混在している。さらに、今回の問題は大阪市における労使関係にとどまらず、日本の労働運動、さらには日本の経済社会を支えている重要な社会的インフラとも言える「健全な労使関係」をも危うくするものである。

 こうしたことから、大阪に働く勤労者の最大の組織である連合大阪は、以下の見解を表明するものである。

1.公務員として働く職員が、民間企業で働く労働者と同じく憲法28条の「勤労者」にあたり労働基本権が保障されていることは最高裁においても承認されている。

2.そもそも労働組合(職員団体含む)の本来の目的は労働諸条件の向上であり、そのために必要な政治・政策要求活動は当然認められている。

 労働組合がその最高意思決定機関である大会で、前記目的の実現のため政治活動を含む諸取り組み方針について決定し、それに基づき組合員が活動することになんら問題はない。

3.今回、橋下市長は「公の施設内での政治活動はあってはならないと発言している〔読売新聞(同)〕が、「政治活動」の定義、そして具体的にどの行為を指して"あってはならない"としているのか不明確である。さらに労働組合の政治活動と政治団体の政治活動を同列に扱うことは法的な根拠を欠く。

4.前項の「政治活動」が「勤務時間中に組合活動をした役員がいること」を指すのであれば、そのことについては慎む必要があるが、そのことをもってして何十年来にわたって認められてきた組合事務所の貸与を含む便宜供与の一切を禁止することは、明らかに論理の飛躍、すり替えである。労働組合に対する嫌悪感からの不利益扱い、支配介入とも受け取れる不当労働行為である。

 最小限の広さの組合事務所を供与することについては労働組合法上も認められており、社会一般的に労使慣行としても認められている。

5.橋下市長は、従来からの当該労使関係、協議の経緯を尊重すべきであるし、今後の対応にあたっても、社会通念上許容される範囲の平和的かつ秩序ある方法により、当該労使関係を大切にして、誠実に協議し対応していくことが必要である。

6.橋下市長をはじめ大阪市当局は、今回のような「健全な労使関係」をないがしろにする一連の行為が、結果的に、市民への安心、安全かつ良質なサービスの低下につながっていくことを強く自覚すべきであり、さらに憲法をはじめ法を守るべき立場にある行政の長として、改めて健全な労使関係の構築に努力すべきである。

以 上

大阪市長の労働組合敵視に対する連合大阪法曹団声明

1 橋下市長の施政方針

 橋下市長は、2011年12月28日の施政方針演説において「公務員、公務員の組合をのさばらしておくと国が破綻する、組合を是正、改善して行く」と述べ、大阪市労連など大阪市関連の労働組合に対する組合事務所退去要求、便宜供与の全面禁止を公言し、労働組合活動に干渉し、妨害する姿勢を宣言した。

 2012年2月9日、橋下市長は業務命令として大阪市職員に対するアンケート調査を行い、組合活動歴、政治家に対する応援活動などに対する回答を強制した。しかし、これらはプライバシーに属するものであり、回答を強制することは憲法に保障された思想信条の自由を侵害する。労働組合を敵視していることが明らかな市長の業務命令は組合員を萎縮させるもので、労働組合運営に対する支配介入の不当労働行為である。2月22日、大阪府労働委員会は実効確保の措置として調査の差し控えを勧告したが、労働委員会の本旨にかなった処置である。

 また、2月22日、大阪市が大量の職員のメールを極秘に調査していることが発覚した。職場の相互不信を煽る不当な行為といわなければならない。

 橋下市長の言動には、法規にたいする誤解と論理の飛躍、すり替えが混在し、適法な労働組合活動に対し不当な非難を続けている。一連の橋下市長の言動は大阪市における労使関係を破壊するに止まらず、日本の社会を支えている重要なインフラである健全な労使関係を危うくするものである。

2 公務員の労働基本権

 労働組合の本来の目的は労働諸条件の向上であり、そのため必要な政治・政策要求活動は正当な組合活動として保護される。労働組合が目的実現のためその機関で政治活動方針を決定し、決定された方針に基づき活動することが正当であることは論をまたない。

 公務員として働く職員が、民間企業で働く労働者と同じく憲法28条の「勤労者」にあたり労働基本権が保障されていることは最高裁においても承認されている。

 橋下市長は、公の施設内での政治活動はあってはならないと発言したと報道されているが、政治活動がどの範囲の行為を指しているのか不明である。地方公務員法36条は一般職非現業の地方公務員の一定の政治的行為に制限を加えるが、全ての政治的活動を禁止するものではない。そして、地方公営企業職員・現業職員は地方公務員法36条の適用を受けない。

3 大阪市労連及び加盟単組による政治活動について

 労働組合は労働条件の維持向上を目的とする団体であり、その目的に沿う政治的活動を行うことは、良好な労働環境を整備していくために当然の権利である。

 労働組合が組織として政治的活動方針を決定し、これを組織内に周知させ、また対外的に公表することは何らの制約を受けず、公務員の労働組合であっても同様である。地公法36条は労働組合とは何ら関係がない。

 にもかかわらず、橋下市長は、大阪市労連傘下の労働組合が政治的活動を行ったこと自体が違法ないし不適切であると非難している。労働組合を政治団体と同列に扱うという市長の発言は全く法的根拠を欠いており、法の無知によるか、あるいは殊更に地方公務員及び労働組合を悪役として世論を煽るものである。

4 組合事務所の明渡要求、便宜供与打ち切りについて

 我が国では、多数の労働組合事務所は無償使用が当然とされている。ここには何らの法的問題も生じる余地がない。公務員労働組合の場合も全く同様に何ら法的問題はなく、全国的にも無償使用が一般的である。

 そして、大阪市労連と加盟単組は、本庁舎内の事務所の賃料は支払い、水道光熱費、通信費等の実費は全額負担している。

 橋下市長は、労働組合が政治活動を行ったとして退去を求める旨発言している。しかし、上述のとおり、労働組合が政治的活動を行うこと自体には何ら違法性はない。政治的活動に行き過ぎがあったとしたところで、労働組合事務所の全面退去を求める正当な理由にはならないことは明らかである。

 大阪市による一方的な組合事務所明け渡し要求は不当労働行為、すなわち重大な違法行為であり、看過しがたいものである。

5 結語

 橋下市長は、任用法規の相違、勤務時間内か時間外か、政治活動か選挙活動かなどを正確に区分することなく、地方公務員労働組合の政治的活動全般が違法、不適正であるかのごとく主張し、正当な権利行使を違法なものであるかのごとく市民に錯覚させようとしている。

 現在大阪市で発生している労働問題、そして橋下市長と大阪維新の会が推進している職員基本条例及び教育基本条例は、労働者全体の労働条件を悪化させ、全ての労働組合活動を萎縮させ、重大な悪影響を及ぼすことになる。

 橋下市長は速やかに労働組合敵視をやめ、アンケートを中止し、正常な労使関係を回復すべきである。

以上

2012年2月24日
連合大阪法曹団