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コラム「徒然なるままに」(2007年9月)

健康で文化的な暮らしができる賃金を!

連合大阪 事務局長 脇本ちよみ

 大阪の最低賃金は今時間額712円である。今年この額が久しぶりに二桁19円アップし、731円になることが、先日の「最低賃金審議会」で決定した(今後諸手続きを行い、10月20日に発効することになる)。

 この最低賃金は各都道府県によって違い、毎年各都道府県の最低賃金審議会で、学者・弁護士など有識者による公益代表委員と、使用者代表委員と労働者代表委員(連合が参画)それぞれ6人の委員で議論をし、改定を決めるシステムになっている。そして、各都道府県での審議の前に中央最低賃金目安委員会が開かれ、それぞれの地域の経済状況のランクに応じた引き上げ目安額が示される。今年は、労働者側としてこの議論に参加しつつ、「絶対に従来にない大幅な値上げを」を合言葉に委員会の中でがんばり、目安額として大阪も含むAランク地域では「19円」が出た。

 結果大阪の審議会で、私たち連合大阪が審議会委員を出している労働者側は通常の労働者の賃金のせめて4割ということで66円アップを最初は主張し、使用者側は5円〜7円アップから譲らず、5回の審議を重ねたが、結果労使の主張の隔たりが大きいまま、最終的に公益委員が目安額の19円引き上げを提示し、決まったのである。

 この19円アップというのは、久しぶりの二桁台の値上げであり、画期的なものである。

 「格差拡大」「二極化」がいわれる中、“最低賃金では暮らせない”“最低賃金のほうが生活保護より下回っている”“最低賃金で暮らす人が多くなり、働いても働いても人並みな暮らしができないワーキングプアの存在”…などが、マスコミでも取り上げられるようになり、世論も大きく「最低賃金」の問題・課題を知り、中央の目安審議の時期が参議院選挙前後という政治的背景もあり大きく後押しをされた形で19円という大幅アップを勝ち取ることとなった。

 しかし、考えてみると、この19円という大幅アップであっても時間当たり731円である。法定時間・日数働いたとしても月12万8656円にしかならず、年収は154万円ちょっとである。OECDの示している貧困率の対象となる年収200万以下である。ここから、保険料や年金掛け金などを引けば、さらに低くなる。病気にでもなればたちまち暮らしていけない額である。

 折りしも、厚生労働省が「ネットカフェ難民」の調査をした数字が発表されている。ざっと全国で5400人という数字であり、20代が27%ついで50代が23%である。TVに写っているある人の給料明細をみると、日給で4500円に交通費1200円が入り5700円。ざっと時間給712円の最低賃金そのままだが、これは違反である。最低賃金には交通費などの手当ては含まれないからだ…。これではアパートも借りれず、毎日「ネットカフェ」で寝泊りし、夜露をしのぎ、その日暮らしをしている人たちの何と多いことか…。

 連合は次期の大会方針で「非正規労働センター」設置構想を打ち出した。連合大阪も大阪版センターの設置にむけ検討を始めたい。最低賃金が大幅にアップされても、このままでは暮らせない賃金であることは明確である。本当に額に汗して仕事をする人が報われる、憲法で保障されている「健康で文化的な暮らし」が保証される社会をつくっていかなければならないとあらためて、痛感している。