コラム「徒然なるままに」(2007年8月)
連合大阪 事務局長 脇本ちよみ
「選ぶには力がいる。流れに乗っているほうがずっと楽だけれど…」と言ったのは、あの世界的ヒーロー「イチロー」。大リーグ・マリナーズとの契約更新を終えた記者会見での発言である。私は、特に野球が好きなわけでも、イチローの大ファンというわけでもないが、彼のいろんな発言や言葉には時々ハッとさせられる魅力がある。この時もなかなか意味のある言葉だなと思ったのである。「選ばれる」のではなく「選ぶ」力。
彼も含めスポーツ選手にとっては、普通「選ばれる」ことが当たり前であり、選んでもらえるようにするのが常とうである。しかし、自分が「選ぶ」にはそれこそ「選んでくれ」と相手側が望むだけの力が備わっていなければできないことである。また、誘われるままに、流れに乗って行き先を決めるのではなく、自分の思いで「マリナーズにいる」ことを選ぶこともまた「生き方の選択」も含めた「力」が必要だと言う意味ではないかと思った。
7月29日は参議院選挙の投票日であった。連合大阪が推薦した大阪選挙区の梅村さとし候補は見事に大量得票で当選を果たした。彼も医者という立場から政治家を「選び」、参議院選挙に臨んだ。きっと大きな力が要ったことだろうと思う。流れにまかせて医者でいれば、順風満帆の人生だったかもしれないのに、今の医療制度に大きな矛盾を感じた自分の感性を信じて、それこそ6年ごとに仕事を失うかもしれない政治家の道を選び取ったのだ。
選挙期間中の彼の訴えや演説には、その彼の「選ぶ力」を感じさせるものがあり、何度聞いてもいつも違った思いや感動が私には感じられた。その力が多くの人の共感を呼び、新人ながら、(もちろん民主党への風が吹いたのも一因であるが)大量得票につながったのではないかと思っている。
そして、私たち有権者にはいつも「選ぶ力」が与えられている。国民として当たり前の「選ぶ力」である。しかし今回の参議院選挙でも大阪で55.81%の投票率であるから、なかなかこの「選ぶ力」をきっちり行使することができていないのは残念なことである。
しかし、今回の有権者の「選ぶ力」の威力はすごいものがあった。怒とうの勢いで民主党が勝った。これは、ひとえに有権者の「ずさんな年金管理や将来不透明な年金制度」「少しもすっきりしない政治とカネの問題」「原爆が落ちたこともしょうがないという、政治家というより人として最低ともいうべき発言」などなどに対する大きな怒りが、与党・自公政権に対する「NO」の形ではっきりと出た選挙結果である。多くの有権者たちが怒りを「選ぶ力」に変えた投票の勝利であると思う。勝った民主党にもその力を十分に感じ、今後、心して国会運営にあたってもらいたいと切に思っている。