コラム「徒然なるままに」(2007年3月)
連合大阪 事務局長 脇本ちよみ
記録的な暖冬である。2月というのに春のような暖かな、穏やかな日が多い。
暮らしにはうれしいことだが、地球温暖化が進んでいる証拠でもあり、世界的に異常気象が続き、動植物の生態系にも深刻な問題が出ているとの報道もされている。南極の氷河や富士山の凍土も非常な勢いで溶けているらしい。このままいくと100年後には海面が何センチも上がり、地図上から消える島や国土も多いとか…。人類にとっては真剣に考えるべき時期が来ているのだと思うが、あまりに大きな課題でありすぎて一人ひとりの課題にまでなりきれていないのが実態ではないだろうか。
私自身そんな深刻なことを思う反面、暖冬で花が早く咲きそろうことは理屈抜きにうれしい。自宅から最寄りの駅まで10分ほどの距離を自転車で通勤しているのだが、その間にいくつか大きな庭のある家を通る(探して通っているという方が正確かもしれないが)ので、塀越しにいろんな花を見られるのが楽しみである。2月の今はうす黄色の蝋梅(ろうばい)にはじまり、白梅、紅梅、万作(まんさく)、しだれ紅梅、黄梅(おうばい)、などをその香りとともに楽しんでいる。
先日わが家にも紫の小さな「においスミレ」が咲いていた。この花が咲くと、もう完ぺきに「春」である。気分もなぜかうきうきとする。
「退職したら○○を…」という願いはいくつもあるのだが、まずは、花が次々と咲きほこる“5月の北海道”にゆっくりと旅してみたいといつも思っている。桜にはじまり、こぶし、木蓮(もくれん)、チューリップ、雪柳、ボケ、りんご、たんぽぽ、すずらん、そしてライラックが咲くまで…すべて5月に見られるらしい。その「5月の北海道」にあこがれているのだ。
北海道生まれの有名な歌人石川啄木の短歌に“友がみな我より偉くみゆる日よ 花を買い来て妻と親しむ”というのがある。
私はこの歌が何となく好きである。“友がみな我より偉く”は見えなくとも、長く仕事を続けてきて自分の力不足を“嘆くこと”や“落ち込むこと”、“むなしいとき”が幾度となくあるが、そんな時この歌を思い出し、どっさりと花を買い求めて帰ることが多い。時には水仙を30本も買って帰り、家中を水仙だらけにしたり、先日の日曜日はスイートピーとフリージィアをどっさり買い求め生けたりと…。私にとってはこの歌のように「花」と「花の香り」は大きな「癒し」である。「花」だけでなく「川」も「山」も「雪」も「月」も「海」も「風」も…、自然は怖い面をもつけれど、しかし人を大きく包み込む「癒し」の力を持つと思う。その意味で、やはり自然ときちんと向き合い、いい形で残す努力が人には求められているのだろう。