コラム「徒然なるままに」(2007年2月)
連合大阪 事務局長 脇本ちよみ
私の住んでいる市では隔週の月曜日が空き缶回収の日である。この日は多くの人が自転車で空き缶集めに回っている。わが家にもきまったおじさんがいつも来るので、「集めやすいように」と娘がアルミ缶とスチール缶を分けて置いている。豊かなはずが、景気回復されているはずが、年々回収してまわる人は増えているように思う。
昨年末、連合がいろんな世代の3000人の組合員からとった「格差」についてのアンケート調査によると、約92%の人が「格差拡大」を感じており、来年(=2007年)の日本を表す漢字は?と言う問いには、第1位が「不安」次いで「混沌」そして「絶望」と答えている。これが、“「いざなぎ」を超える景気回復真っただ中”にあるといわれる社会で働く者の「実感」である。何と寂しいそして悔しいことであろうか。
年間所得の8年連続の低下や、家計収支の7年連続赤字、国民の5人に1人が貯蓄ゼロ世帯など、多くのデータはその「実感」をはっきりと裏づけている。
景気回復がされているなら、それは、とりもなおさず、そこで働く多くの従業員の頑張りがあってこそ達成できた回復ではないのか。その昔、生産性向上にむけて、「生産性三原則」(1.雇用の安定・確保、2.労使協議の原則、3.成果の公正な配分)が労使の間で確認され、そしてこの三原則は今も通じる普遍的な原則であると思うのだが、一体どこへ行ってしまったのか?と思うほど、「労働者配分」を減らし「株主・経営者配分」へと大きくシフトしてきているのは確実だ。
そして、同じ昨年末に労働政策審議会で相次いで重要な労働法制について検討され、法案化されようとしている。「ホワイトカラーイグゼンプション」(残業をしても残業代を支払わないですむ層を固定化する制度)をはじめとする「労働契約」や「労働時間」についての法制化である。与党は、参議院選挙での影響を考えてこの通常国会には出さないことを決めたようであるが、いつかはこれらの法案を通し、働き方を大きく変えていこうとしていることは明らかである。「残業代も払わない」「いくらかのお金さえ積めばいつでも勝手にクビにできる」「派遣社員などの有期契約の期間制限もなくなる」など…“これ以上命を削って働けというのか!「働く者」を何と心得る!!”と水戸黄門のように叫びたくなる法案が準備されていると言うことである。
先述の連合のアンケートでは、このまま格差社会が続くとどうなるか?という問いに「犯罪が増え、治安が悪くなる」と答えた人が多くあった。私はすでにその範ちゅうに社会は入ってしまっていると最近思う。「殺人」や「バラバラ事件」がこんなに日常の話題になってしまって果たしていいのだろうかと大きな不安を覚えるのだ。
このままでいいはずはない。将来に不安を抱き、絶望を感じつつ働く社会でどうして生産性の向上ができ、納得のいくいい仕事ができるだろうか?仕事をすることは義務であると同時に人としての権利である。“人として尊厳ある働き方・生き方”を求めるためにこそ「2007春季生活闘争」をがんばりたい…と思っている。