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コラム「徒然なるままに」(2006年10月)

大人の塗り絵のススメ!?

連合大阪 事務局長 脇本ちよみ

 「大人の塗り絵」がブームになっている。本屋には「大人の塗り絵コーナー」が設けられ、いろんな塗り絵の本が並んでいる。実は、こんなにブームになる前から私もやっているのだ。「脳の活性化に、ぼけ防止に有効!」のキャッチフレーズに引かれて、上等の水性色鉛筆ともども初級編の本を3冊買い求め、暇を見つけては時々やっている。

 絵はとんと下手な私だが、この塗り絵はちゃんと上手な下絵が描いてあり、色塗りの見本も付いているので、その見本を見ながら色を付けていけばいいのでそれなりに仕上げられるのだ。それと、その色塗りをしている間は集中して色や塗り方を考えながら取り組むので、他のことを何も考えないという点ではある意味ストレス解消にもなっている。

 “集中する” “手先を動かす” “色を考える”—これらの作業が脳の活性化につながるらしい。そして結果として脳の老化を防ぐということで、「物忘れ」がひどくなってきている昨今「少しでも…」という思いもあり時々取り組んでいるが、効果のほどはどうか…!?。

 先日、テレビを見ていたら、脳学者の茂木健一郎さんが対談で「脳の研究として今後最も注目しているのは、『創造力』と『コミュニケーション力』と脳の関係」と言われていて非常に興味深かった。茂木さん自身脳の研究や脳に関する本を出され話題になっているが、彼は脳の学者ではなく、「ソニーコンピューターサイエンス研究所」の勤務者であり、そこがまた面白いと思った。彼は「脳の研究はすでにほとんどしつくされ、例えば、IT関連であるとかロボット研究であるとか、社会や産業として必要なものはほぼ実用化されている。しかし、逆に解明されていないのは人の創造力やコミュニケーション力との脳の関係」だと。

 私自身「脳の働きと日常」を日ごろはあまり深く意識していなかったし、脳の働きイコールいわゆる「読み・書き・そろばん」に代表される「学力」と同義語のように思ってきたところがあるが、本当は「人の生」そのものといえるかもしれないと改めてその時に思ったのである。例えば「胸キュン」の思いやときめき、大きな緊張感やドキドキ感、嫌悪感や憎しみといったいろんな思いも、イメージもすべて脳の働きと密接にかかわっているのだなと思う。そして「創造力=想像力」でもあると思う。いろんな思いが想像できる力は相手の思いや立場や痛みをも描ける力であり、それが豊かで深くなければものを生み出す創造力だって育たないであろう。

 そして「想像力」を豊かにするには、多くの人とのつきあいやコミュニケーションは欠かせない営みだ。以前この欄でも紹介した「美人の日本語」には「人間=人愛=ひとあい」という章がある。「『ひとあい』とは人とのつきあい、人に対する愛想のことで人との関わり方そのものが人間そのものである」というのである。

 茂木さん流にいえば、人間(ひとあい)も基本は脳の力ということになるであろうか。やはり、いろんな意味でこれからも「大人の塗り絵」を続けてみようと思っているところである。