コラム「徒然なるままに」(2006年2月)
連合大阪 事務局長 脇本ちよみ
(株)ライブドアの「ホリエモン」が逮捕された。彼のようなヒルズ族のように株を(ごまかしつつだましつつ!?)売買するだけで一晩に億単位の金を動かす人がいる一方で、額に汗して必死で働いて年収200万円以下で暮らす人も多く、この格差が拡大してきているのが今の社会である。「金は天下の回りもの」といわれてきたが、今はごく一部の人たちの所をグルグルと回っているだけのような感じがする。何かがおかしい。
みんなが貧しかった戦後から、一億総中流といわれる時代に…そして今、持てるものと持たざるものとの格差はどんどん広がっている。
景気は上向きといわれ、企業の経常利益も上がってきている。しかし、その利益がまじめに働いて企業の利益に貢献してきた働く人々に公正に分配されていないことが問題であり、今年こそは「賃金改善」を春闘の前面に出し、その分配を求めていこうというのが、連合の方針である。この方針も含め、すべての組合が春闘に取り組む課題(4つのミニマム課題)として「規模間や男女間の格差是正、均等待遇の実現にむけた継続的な取り組み」などを掲げている。
所得の格差拡大は、雇用の格差とつながっている。格差是正という時に、企業規模間の格差是正と同時に同じ企業の中でも、系列企業の子会社や孫受け会社も含め、そこで働く社員や派遣社員、嘱託社員、パート労働者などとの格差是正も課題として取り組んでいく必要があると強く思っている。これらを是正し均等待遇を実現するのは春闘のみでは難しい。しかし、働き方の多様化が進み、その雇用形態間での労働条件の格差がこれだけ大きい今、同じ職場で働く隣の人が自分とは違う待遇にあることに私たちはもっと敏感になるべきだろう。
「木を見て森を見ず」と言われる。“細かいことにとらわれすぎて、大きく全体をつかめない”ことを指して使われる言葉である。確かに細かいもろもろに目を奪われて、ミクロの世界に入り込むと、大局、流れ、全体像が見えないことも多々ある。しかし、最近ちょっと視点を変えてみると“森を作っているのは1本1本の木であり、その木がきちんと自立して育たない環境では、結果として森も危うい”のではないかと思う。
森をつくるすべての木が共に大事にされ、働いていくことで森は大きく育つ。企業も、社会もそして組合も…。「人が大事にされること」そのことを基本から見直す、春闘もそこからである…と思っている。