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真の「生産性向上」とは

2018年9月27日 (第11回執行委員会)
連合大阪 会長 山﨑 弦一

 大阪市地域協議会の杉本議長が9月12日に急逝された。58歳でのご逝去は痛恨の極みである。これまでの連合運動へのご貢献に感謝するとともに、ご冥福をお祈りして、黙とうを捧げたい。

 最近、「生産性」あるいは「生産性向上」という言葉が、いろんな場面で言われている。「働き方改革」の議論はもちろんのこと、皆さんもご承知のように、全然違う土俵でも登場し、物議を醸している。
今日は、生産性ということについて、その原点と今日的な課題について、私見を申し上げ挨拶に代えたい。

 言うまでもなく、生産性向上運動の原点は「生産性3原則」である。

 一つ目が雇用の維持・拡大である。ものの本によると、「生産性の向上は、究極において雇用を増大するものであるが、過渡的な過剰人員に対しては、国民経済的観点に立って、能う限り配置転換その他により、失業を防止するよう官民協力して適切な措置を講ずるものとする」とある。

 今、雇用については、安倍総理が言うように統計数字上は拡大しているが、一方では、雇用労働者の約4割が非正規労働者という雇用の不安定化、そして、こうした不安定雇用で働く人たちが社会保障に紐づけされていないことが大きな問題だ。また、将来的には、情報通信技術のさらなる発展やAIの本格的な導入による雇用の減少が懸念されているし、AIの導入のやり方いかんによっては、雇用がさらに不安定化し、社会の分断が加速されることが懸念されており、こうした課題への対応が求められている。

 二つ目の原則が、労使の協力と協議である。生産性向上のための具体的な方法については、各企業の実情に即し、労使が協力してこれを研究し、協議するものとする。

 したがって、働き方改革は、本来、高度プロフェッショナル制度のように政府から与えられるもではなく、まさに、現場発想での取り組みが求められている。

 さらに、ここで付け加えたいのは、1959年のヨーロッパ生産性本部のローマ宣言の有名なくだりである。すなわち、「生産性とは、何よりも精神の状態であり、現存するものの進歩、不断の改善をめざす精神の状態である。それは、今日は昨日よりも、明日は今日よりも優るという確信である。それはまた、条件の変化に経済生活を不断に適応させていくことであり、新しい技術と新しい方法を応用せんとする努力であり、人間の進歩に対する信念である」

 簡単に言えば、働く者の「心の持ちよう」が大事だと言っている。もっと簡単に言えば、仕事がおもしろいと思うことが重要だということだろう。経営側には、おもしろい仕事、付加価値の高い仕事を用意する義務があるということ。また、働く側も仕事をおもしろくするにはどうしたらよいかということを主体的に考えることが必要である。それを労使で、しっかり議論することが生産性向上には重要だと思う。

 ロシアの作家ゴーリキーの「どん底」という戯曲のなかでの台詞を紹介しておきたい。「仕事が楽しみなら人生は極楽だ。仕事が義務ならば人生は地獄だ」

 そういう視点が大事だ。

 三つめの原則が成果の公正配分である。生産性向上の諸成果は、経営者、労働者および消費者に、国民経済の実情に応じて公正に分配されるものとする。

 同一労働同一賃金の問題も含め、公正配分ということについても、今改めて、しっかり取り組むことが必要だ。

 後ほど、後半年の運動方針を提起するが、皆さんとともに、こうした運動に取り組んでいきたい、ご支援のほどをお願いしたい。