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将来の社会像を見据えた政策を

2017年4月21日 (第18回執行委員会)
連合大阪 会長 山﨑 弦一

 今日は3点について申し上げる。

 1点目は、4月13日に開催された連合本部の中央執行委員会での神津会長のお話を紹介する。2017春闘は、①4年連続の賃上げ、②格差是正、③広がりをもたせていくことにこだわる、としてきた。おかげさまで、300人未満の中小で昨年より前倒しの回答が続いている。また、賃上げ分がわかるところは、昨年を上回っている。しかも大手よりも高い水準を勝ち取っており底上げができつつある。皆さんのご努力に敬意を表したい。

 また、働き方改革は、残業上限時間、同一労働同一賃金については、実効性のある法整備に向けて、労働政策審議会での議論が始まる。議論の状況については都度報告していきたい、とのお話があった。

 2点目は、働き方改革の話題。

 関西生産性本部の「内外のトップを囲む懇談会」で、株式会社日本総研の山田久氏から「働き方改革」に関するお話があった。

 各論についていえば、少し意見の異なるところもあるが、「『働き方改革』については大事であるが、『将来の社会像が提示されていない』『アドホック(限定的)な対策に終始していないか』」という山田さんの見解には同感するところである。

 元朝日新聞記者の稲垣えみ子氏は、その著書「魂の退社」で、「日本の社会保障は会社に属していることが前提になっているものが多く、一個人に対しては非常に脆弱だ」という指摘をされている。
 今、非正規で働く人が40%近くにまで増えてきているということは、会社に属していない人が多く、社会保障が不十分な人が多いという実態があるなかで、安倍政権が自己責任だと言っているところに、社会の実態と政策の間に大きなギャップがあるということではないかと思う。

 働き方改革を言うのなら、社会保障と税の一体改革、さらには、学校教育や職業教育のあり方など、将来の社会像を見据えた政策パッケージとして考えるべきであり、そうした政策を打っていく順番も極めて重要だと思う。という私からの意見提起には、山田氏からも全く同感だというコメントがあった。

 3点目はAI(人工知能)について。

 先日、日本の人口動向の発表があった。そのニュースを見ながら、「子どもを増やす方策を、フランスのように、もっと真剣に考えるべき」と強く思っていたのだが、先日、これも関西生産性本部の会合で「AI」の専門家の話を聞いていると、「人口は少なくていいんだ、みんな働かなくてもよくなる、仕事はロボットと人工知能がやってくれる。人にはベーシックインカムを導入すれば、働かなくても幸せに暮らせる」というお話があった。

 具体的には、AIが発達すれば、従業員の仕事は全てAIがやり、企業には経営者しかいらなくなる。そうすると人件費が不要になるので、企業は相当な利益を稼ぐことができる。国は、そこから税金をとり、全国民に一定額のベーシックインカムを支給する、という考え方である。

 人口を増やして皆で働くことを考えるのか、AIとロボットの開発を加速して働かなくても良い社会をめざすのか? AIと共存する社会像をどう描くのか? 皆さんは、どう思われますか? という課題提起を申し上げてあいさつにかえたいと思う。

  •  ベーシックインカム(basic income)とは最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で定期的に支給するという構想。