コラム「あんな相談こんな事例」(12) 2012年12月
連合大阪 非正規労働センター 相談員 大塚 義彦
総務省労働力調査(2010年度)によると、派遣・パート・契約社員などの非正規労働者が全雇用者に占める割合は、年平均で34.3%となり、比較可能な02年以降で最大となった。非正規労働者の多くを占める有期契約労働者の増加に加え、請負、業務委託などの雇用以外の契約への移行も進んでいる。非正規労働者が、引き続き雇用の調整弁になっていることがうかがえる。
このような労働環境の下、有期労働契約については、厚生労働省の労働政策審議会から提出される2012年の通常国会への法案を視野に、審議会の議論はこれから大きな山場を迎え、パートタイム労働法についても、研究会の報告を受けて審議会での議論が始まっている。雇用を確保する法整備に向け、重要な局面を迎えている。
連合大阪非正規労働センターの「なんでも相談」には、次のような相談がたくさん寄せられている。
派遣社員として派遣先会社に3年勤務して、やっと昨年、派遣先会社の契約社員として直接雇用となった。もうすぐ契約更新の時期を迎えるが、運が悪く突然病気で入院することになった。次期は、契約更新されるかどうか不安でしょうがない。正社員は病気で休んでもなんともないが、契約社員が休むとすぐに切られる。何年たっても給料は上がらず、しょせん非正規労働者は切られるだけ。不公平な世の中だ。
1年更新の労働契約を4回更新して、もうすぐ5年目の更新となる。入社時の面接では、「何回か契約更新すれば、正社員に登用する」と言われて頑張ってきた。去年の契約更新時に、正社員への登用の話を持ち出すと、今年は業績が悪いので無理だと言われた。このまま業績が回復しないと、契約更新すら危うくなる。安定して働き続けることは、とても難しい。
4月から1年契約で働き始めたが、契約期間の途中なのに、会社の都合で一方的に1日8時間勤務を6時間に変更された。勤務時間が減ると収入も減るので納得できないが、雇止めされると生活できないので、我慢して働いている。
前述の相談事例のように、非正規労働者をめぐっては、不安定な雇用や処遇の格差、セーフティネットの不備など、多くの問題があり、労働者保護とディーセントワークの実現のためのルールの確立が急務となっている。
フランスやドイツのように、有期労働契約を締結できる事由を一時的な事業活動の増加や季節的・一時的な業務などの場合に限定し、該当しない場合は期間の定めのない労働契約とみなすことによって、締結事由を制限している国もある。
深刻化する格差や貧困などに歯止めをかけ、安心と希望につながる社会をつくっていくために、誰もが公正な労働条件のもとに、安心して働き続けることができるルールの確立を望んでやまない。
(執筆:2011年12月)