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コラム「あんな相談こんな事例」(11) 2012年11月

最近の労働相談の動向と労組加入

連合大阪 非正規労働センター 相談員 坂本 眞一

イメージ 5月末に厚生労働省から「平成22年度の個別労働紛争解決制度施行状況」が発表された。総合労働件数は113万件、民事上の個別労働紛争相談件数24万6千件で総件数で0.9%減。内容を見れば「いじめ・嫌がらせ・自己都合退職などが増加する一方、解雇相談が大幅減少・多様化」し、「相談・斡旋など」の利用者は「パート、アルバイト、期間契約社員と言った非正規労働者の割合が増加」となっている。

 連合の平成22年度の相談件数は1万2千5百件(7地方連合会が未集計)であり、最も多いのが「解雇など雇用関係(22%)」次いで「賃金関係(20%)」である。昨年度の連合大阪の労働相談件数(記録として残している件数)は昨年1,342件(一般相談を除く)で連合全体の1割強を占めており、最も多い相談は「解雇など雇用関係(27%)」、ついで「賃金(19%)」となっている。

 相談内容は「連合全体の動向」とは一致しているが、厚生労働省の傾向(「解雇が減少」など)とは少し異なる。しかし統計上は「解雇」「賃金」と集約されているものの相談員としての実感では、厚生労働省の統計結果と同様「非正規労働者」の「いじめ・嫌がらせ」相談は確実に増し、それに伴い「うつ病」「うつ状態」などの症状を持った相談者が増えている。

 上記の状態を反映している1つの現れかもしれないが、最近「一人でも入れる労働組合に加入したい」との相談が増している。月別の「組合結成・加入(複数加入相談も含む)」相談件数(連合の「相談分類」による分類)は1月7件、2月2件、3月1件、4月4件、5月6件、6月16件(「解雇・未払い賃金などで組合加入」を除く)となっている。5月〜6月が増加した原因は直接的には5月に行った連合の「組合加入コマーシャル」が影響していると思われるが、「コマーシャル」は「潜在的にある組合加入意識の引き金」であろう。

 「組合加入」は解雇などの個別紛争で「即時加入」のケースが多い。しかし個別紛争で「組合加入で解決をめざす」ことは「喜ぶべき事態」だが、即座に加入を勧めることの出来ないケースもある。6月の具体事例からそれらのケースを揚げる。

 (1)デイサービスセンターに勤務しているが『いじめ・嫌がらせ』を受けており組合加入したい(ケアマネージャー)、(2)「就業規則・賃金規定の一方的変更」があり、相談者は「賃金アップ」したが部下の賃金が下げられ、相談者のみ組合加入して、部下のために会社へ「申し入れ」を行い闘いたい(グループリーダー)。

 (1)のケースは「即座に組合加入し改善を申し入れた際、「会社は相談者に対し一層かたくなな対応をし、相談者が孤立させられる」可能性が強く、「いつでも組合加入し会社へ申し入れ」を行う心構えを持ちつつ、当分の間仲間を集めることとした。(2)は特異なケースであった。相談者は「過去に組合加入で経営者から受けた対応」がトラウマとして残り、そのため「部下は組合加入はさせない」「自分ひとりが組合加入し闘う」と言う強い思いを持っており、「考え方」を変えようとしなかった。面談の結果は「継続して相談しよう」となった。

 相談者の「労働組合に対する理解」もさまざまである。「問題解決をしたい」「会社と対等に協議したい」との思いは理解しながらも、相談員として労組加入をすぐに勧められない事例である。現実対応をことさら重視せず新たな発想で「組合」を捉えることが必要なのかもしれない。

(執筆:2011年11月)