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コラム「あんな相談こんな事例」(10) 2012年12月

派遣社員の声なき声にもっと耳を傾けて(2)

連合大阪 非正規労働センター 相談員 坂本 博信

 大手企業(製造業)に4年間派遣されていた40代女性からの相談について掲載した。

*相談の概要*

イメージ 派遣先事業所で受けたセクハラ・パワハラに対して、労働環境の改善を職場に申し入れても納得できる対応をしてもらえなかった、ということを派遣社員同士でメールのやり取りをしていたことなどを理由として突然の派遣終了を派遣元から通告されたというもの。

 その後、相談者は会社の調査結果についてメールの調査や常識のある正社員(複数人名前を伝えている)への聞き取りをすればすぐ分かることと納得せず、再度、労働組合役員に事実関係を伝えパソコンメールの調査や同僚の聞き取りを要請した。

 何回かの相談者と事実関係のメールのやり取りをおこない、その内容を追加で労働組合役員に伝えた。

 その後、会社人事も再度調査を行い、職場で相談者が業務対応を間違ったのではなかったとの事実が判明し、パワハラ元上司と転勤先のその上の上司、人事を交えて聞き取りを行い、いろいろ再度調査した結果、パワハラ元上司は相談者の主張は正しく、相談者の取った対応自体は間違っていなかったにもかかわらず、誤って注意したことについて反省し謝罪の意を表明した。

 その後、人事の責任者の署名入りで事実関係を確認した書類が作成された。パワハラ元上司が謝罪した場に立ち会ったこと、事実関係の調査が不十分であったことの謝罪、管理者教育に力を入れているが、まだまだ不十分なので働く従業員が自分の能力や専門性を十分発揮できるような環境づくりに取り組んでいく、という内容のものであった。

 相談者に連合大阪に来て貰い、労働組合役員と同席の上、人事からの書類を手渡した。相談者は自分だけでは派遣先に話を聞いてもらえる機会がなかったことが実現し、派遣社員の身分では言いたくても言えないことを派遣先に伝えることが出来たこと、そのことは今も残っている派遣社員へのサポートになるのではないか、と感謝の言葉があった。相談者は今後、困ったことがあれば労働組合役員に相談することが出来るのかとの問いかけに対して、労働組合役員は労働組合員ではなくとも働く仲間として、相談があればできる限り対応すると答えてくれた、とのこと。

 相談者も元々は正社員であったがその会社が倒産し、その後、勤めた会社もセクハラで辞めるしかなく裁判にまで発展した。裁判には勝つことが出来たが精神的に疲れ、正社員の就職先も見つからず、派遣として働かざるを得なかった。このような経験から、今回は法の上での解決を望まなかったという経過がある。正社員も、その勤めた本人の事由以外で、いつ職場を失うか分からない。

 今、相談者の年齢から言うとなかなか正社員の職に就くのは困難だが、今回のことは、多少不満は残るが、気持ちの整理ができたので念願の国家資格を取るための試験に集中し、派遣社員ではなく正社員としての採用を目指したいと言っている。

(執筆:2011年10月)